2001年新創刊
21世紀型キャリアマガジン
『I-CAREER』創刊第3号
『I-CAREER』表紙

「新人若手議員の1日を追う」
「仕事している政治家の姿」でまず思い浮かぶのは、議場に立つ姿だろうか。しかし議会や委員会に出るだけが議員の仕事ではない。その仕事は多岐にわたっている。議員は普段、どんな仕事をどのようにしているのだろうか。任期一年目の新人若手議員に1日密着。その仕事ぶりを追ってみた。

 29歳の時、史上2番目の若さで神奈川県議会議員に当選した吉田大成氏。より開かれた議会を目指して、秘書から県議会議員への転身だった。現在31歳。「PASSION、情熱が政治家にとって絶対欠かせないものだと思います」と若い力をみなぎらせている。

『I-CAREER』

9:02〜10:37“事務処理”

 7時から8時30分、小田急多摩線五月台駅で駅頭演説。現在は参議院選挙に向け週2回程度駅頭演説をしている。「普段は、議会の前後に演説しています。今後の議会ではどんなテーマが話し合われる予定で、結果がどうなったということを県民の皆さんにお伝えしているんです。それというのも『もっと多くの人に県政に関心を持ってもらいたい』と考えたのが、立候補を決意した理由のひとつなんですよ。新聞もテレビもなかなか地方議会のことを報じない。また住民の方々も、東京のベットタウンゆえ、時に「神奈川都民」などと揶揄されるように、国政には興味はあっても地方議会については関心が低くなるきらいがあるんです」9時02分、小田急線百合丘駅前にある事務所に戻り、今日のスケジュール確認など。10時37分に事務所を出発。

10:40〜10:58“挨拶廻り”

「実は私は、松沢成文衆議院議員が神奈川県議会議員から衆議院議員になった時に秘書になり、5年後にその地盤を受け継ぐ形で立候補したんです。」松沢議員の秘書時代からの支援者、大塚雅嗣氏を訪問。「今までのスタイルをどんどん変えていってくれ。」と激励を受ける。「地盤を受け継いたとはいっても、選挙の期間前には明細地図片手にシラミ潰しに戸別訪問しました。特に住宅地区では、1件、2件と断られても落ち込んだ気持ちを立て直す間もなく、次の家が目に前にあります。休んだらだれてしますと、一つのブロックを一気にまわりました」

11:51“神奈川県庁着”

「神奈川県議会議員は県民850万人の代表。地元麻生区だけでも14万2千人の代表であるだけに、やりがいと同時に大きな責任を感じています」。気持ちを引き締め、11時51分,神奈川県庁に到着。現在31歳の吉田氏は県議会の最年少。「今後は私より若い人たちにも政治に興味を持ってもらえるよう、活動を計画中です」

12:23〜12:38“かながわ清風会団会議”

 赤い絨毯が敷き詰められた廊下をを歩き「かながわ清風会控室」へ。同会は、民主党議員24人と無所属の4人の会派。議会の前の団会議もこのメンバーで行う。午後に開かれる本会議での採決について確認。その間にお弁当の昼食。

12:40〜12:56“本会議用打ち合わせ”

 かながわ清風会控室で同僚の岩崎尊之議員と本会議に向けた打ち合わせ。1期目や2期目の若手議員が多い民主党では、空いている時間があると自由闊達に議論が交わされる。「自分が所属できる委員会は一つ。そういう意味では、議案や県政の課題のすべてについて議会の場で直接意見が述べられるわけではない。だから、同僚の議員と情報や意見の交換を重ねて、本会議や委員会に臨みます」館内放送で13時からの議会開会がアナウンスされ、議員は控室を後にする。

13:00〜13:25“本会議”

 神奈川県議会は、通常13時から開かれる。「席はおおむね当選回数と年齢によって決まりますが、どれも一番下の私は最前列のど真ん中です」。この日採決される議案は、ドームシアターの買い取り執行と国の法改正に伴う条例の改正。議長が知事より提出された議案を読み上げると、共産党と神奈川ネットの議案がドームシアターの議案に反対意見を述べる。この後、起立による採決の結果、賛成多数で可決。「今回の議案についてはいまだ未解決の部分が残されていますが、12億3千万円で県が購入した施設を今後いかに有効活用していくかが課題です」代表質問などがある時には18時頃までかかることもあるが、この日は13時25分に閉会。

12:40〜12:56“デスクワーク”

 13時32分から13時54分「川崎市選出議員会議」。同会議は川崎市の発展に力を合わせるため結成され、同市選出の神奈川県議会議員で構成されている。この日は年度始めの総会で、代表幹事の選出が議題。14時02分、かながわ清風会控室に戻り、自分の机でデスクワークに取りかかる。パソコンに向かい、5月26日に新百合丘駅のホテルモリノで開催するパーティーの準備なども。「県庁の職員は専門的な知識を持っている。質問の準備や地域の方々からいただいた相談事を処理するにも、お願いすればレクチャーをしてくれる。ほかの議員との意見交換もできるので、こうした作業は事務所よりこちらでする時間のほうが多いんです」15時55分、県庁を後にする。

16:55〜17:36“事務処理”

 16時50分に事務所に戻る。奥様がいれてくれたお茶を飲みながら新聞に目を通す。「国会議員と違って、県議会議員や市議会議員には公設秘書はつきません。幸い子供もいないので事務所番は妻に頼んでいます。4年に一回の選挙ではお金かけないつもりでも、それなりの費用はかかります。支援者からの寄付金も大切な運営資金。だからこそ、なるべく無駄はしたくないという思いは常にあります」ちなみに神奈川県議会議員の月収は、横浜市議会議員とまったく同じで97万円。「この仕事の唯一のネックは休みのないところです。週末はスポーツイベントなど、さまざまなイベントが開かれている。夏休みには盆踊り大会巡りなど、季節の行事もある。地域の行事にはなるべく顔をだすようにしているのでいつも大忙しです」

吉田写真
事務処理
挨拶回り
神奈川県庁到着
かながわ清風会団会議
本会議用打合せ
本会議
デスクワーク



“吉田大成が語る県議会議員の仕事”

「委員会の公開も検討したい」
 神奈川県は横浜市と川崎市の2つの政令指定都市を県内に抱えています。それ以外にも中核市や特例市が多数あるなど、全国でも珍しい県です。地方分権の流れの中でさまざまな権限が基礎自治体である市町村に移譲されており、政令市における県の仕事は県立高校、警察、治水事業だけと言われるくらいです。今後は国や市町村との役割分担を明確にして、広域行政である県政の機能をしっかりと確立していかなければならないと思います。
 議会は年に4回開かれていますが、必要に応じて臨時議会も開かれます。神奈川県議会では委員会での審議を重視していることもあり、本会議での採決は委員会の段階でほぼ結論がでています。そうした点からも、現在傍聴が認められていない常任委員会の公開については、今後真摯に検討していかなければならない問題と考えています。

「県政をわかりやすい形で発信」
 私は県議会議員になって1年目は文教常任委員会、2年目は総務企画常任委員会に所属していました。3年目の今年は、県民企業常任委員会に所属することになりました。この委員会は県の広報・広聴、文化施設、消費生活、人権問題などといった事業が所管テーマとなります。私の活動の柱でもある「県政への県民参加・対話型行政の推進」のためにも、特に広報・広聴の重要性を論議し、県政を県民の皆様にわかりやすい形で情報発信できるよう尽力したいと思っています。
 議会で発言するたびに議員という仕事の重みを実感します。ただ私が議員に立候補できたのには運もあるんです。政党に所属していると、同じ党の議員が同じ地域で現職を務めていればなかなかチャンスは回ってこないでしょう。私の場合は故郷である麻生区でちょうど県議会のポストが空いたため「このチャンスを逃したら次いつチャンスがくるかわからない」と思い、立候補を決心しました。立候補には一歩踏み出す勇気がやはり必要ですね。

「政治家に必要な“4つのP”」
 私は松沢成文議員から「政治家には4つのPが大事だ」と教えられ、座右の銘にしています。Personality(人間性)、Passion(情熱)、Policy(政策)、Propaganda(宣伝)の4つです。どれか一つが欠けてもダメ。なかでもPassion(情熱)は、政治家にとって絶対欠かせないものだと思います。どんなに人間性が素晴らしくても、良い政策を持っていても、それが有権者の心に届かなければ意味がありません。情熱が無ければ、相手の心には入り込めない。
 議会だけでなく、この社会の中に張りめぐらされたさまざまな旧弊を打ち破ることは、なかなか難しい。しかし、今後も情熱をもって、県民と一体となって新しい神奈川スタイルを築きあげたいと思います。

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