神奈川県議会 平成16年9月定例会
代表質問


1.知事の政治姿勢〜自治基本条例の制定について

[質問]

 質問の第1は、知事の政治姿勢についてでありますが、知事の政治姿勢とも密接な関係ともなります自治基本条例をテーマにお伺いをしてまいりたいと存じます。
 近年、地方分権改革の動きと軌を一にして、「自治基本条例」の制定に向けた動きが、市町村を中心に具体的、かつ急速に進んでいます。
 この自治基本条例とは、住民自治の視点から自治体運営の基本理念・原則と、住民の権利、長や職員の責務、議会の責務、住民参加の手法など、制度や仕組みをルール化した自治体の最高規範であり、「自治体の憲法」というのが大方の捉え方のようであります。
 ではなぜ、自治基本条例の制定に向けた動きが各地で進められるようになったのか。これには、いくつかの要因があります。
 まずひとつに、平成12年の地方分権一括法施行に伴い、自治事務の拡大、条例制定権の拡大、機関委任事務の廃止がなされ、地方自治体は、国と対等・協力の関係に立つものと位置づけられるようになりました。これにより、「国の下請け機関としての地方自治」から「住民のための地方自治」への転換、つまり、自治体自らがより強く住民自治の確立を目指す必要にかられるようになったのであります。地域の特性が活かされた住民自治の実現のためには、その組織運営に関する決まりや仕組みを最高規範として結実させていくことが必要との認識が深まってきたことが挙げられます。 また、情報公開制度の充実、パブリックコメントや住民投票など、住民が行政の政策立案と実行に対し、自発的に関わりを持てる機会が増えてきたことによる、住民の「公」、行政への参画意識の高まりも大きなきっかけとなっていると考えられます。そうしたなかで、地方行政への住民参加の手法を明文化する必要性が出てきたということであります。
 さらには、国への不信、集権的行政の行き詰まりから、地方自治再生への期待が高まったことに伴い、再生に向けた基本指針を明文化する必要性があったということであります。近年、行政運営のあり方については、行政管理から「行政経営」へ、行政経営から「ガバナンス」へと、その考え方も急速に変化してきています。その変遷のなかにあって、住民自治の観点、多様な主体による統治をめざす「ガバナンス」の考え方の浸透により、自治基本条例を定める動きが全国で活発になってきたと言えるのであります。
 全国での自治基本条例をめぐる動きを見てみますと、県の自治総合研究センターの昨年夏の調査結果によれば、これまで北海道ニセコ町をはじめ15市町村、都道府県では北海道が制定済みであり、また、1県16市町村において策定作業中となっております。
 一方、本県での動きですが、松沢知事は、昨春の選挙の際に提示したマニフェストに、常設型の「県民投票制度」や知事の多選禁止の制度化を含む「自治基本条例」の制定を掲げられており、その方向性は、今春策定の『地域主権実現のための中期方針』に、「自治基本条例を策定する際の課題等についての調査・研究」として盛り込まれたところであります。 また、平成14年から2年間に渡り、自治総合研究センターにおいて自治基本条例に関する研究が進められ、本年3月にその研究報告書がまとめられたところであります。
 今後、この報告書も参考にされながら、県として「自治基本条例」についての具体の検討に入っていくものと思いますが、その検討にあたっては、様々課題もあるものと考えます。例えば、知事の道州制移行を目指す姿勢、及びその前段となる首都圏連合構想との整合性の問題、また、基礎自治体ではない都道府県において自治基本条例を制定することの意義なども指摘をされているところであります。

●そこで、知事にお伺いいたします。
 マニフェストで本条例の制定を掲げ、また、『地域主権実現のための中期方針』にも調査・研究が盛り込まれた訳でありますが、知事が考える、これからの地方自治のあり方、広域自治体としての県政のあり方、そして神奈川の姿を照らしたうえで、本条例の制定により、県政発展にどのような効果を期待しているのでしょうか。その有用性について、知事のご所見をお伺いします。


 知事は6月8日の定例記者会見において、自治基本条例について問われ、「県の行政としても、神奈川でどういう形ができるのかを、調査研究、検討から始めて、これから議論に入りたい。最後はどういう形になるかは、これは議会とも意見交換をしなければならない。」とし、提案時期については「予測はできないが、マニフェストに沿った形で進めていきたい。」と述べられています。
 私は、単に理念を謳うだけの飾り物のような条例ではなく、地に足のついた、まさに「使える条例」として、自治基本条例の制定を目指すのであれば、知事が「県民・NPO等の意見を十分に聴取し」とマニフェストで示されているように、まさに県民の理解と自発的な参画なくして成しえることはできないものと考えております。本条例が持つ趣旨を考えれば、検討の過程は非常に重要な鍵を握るものであります。しかしながら、本条例に対する県民の理解や関心は決して高くはないのが実情であります。「マニフェストに沿った形で」、また「県民参加で」ということならば、尚のこと、今後の検討体制およびスケジュールなども早期に示していかねばならないと考えるところですが、残念ながら、スピードと躍動感をモットーに県政に臨まれている松沢知事にしては、その歩みが少々遅いのではないかと感じているところでもあります。

●そこで、知事にお伺いします。
 自治基本条例の検討・策定過程においては県民の参画は不可欠と考えますが、本条例に対する関心と理解が県民の間に浸透していない現状をみれば、庁内での検討準備と同時並行で、県民の意識の醸成、そして機運を高めていくための取組も必要であろうと考えますが、知事のご所見をお伺いします。



[答弁]

 まず最初に、自治基本条例の制定が県政の発展にどのような効果があるのか、その有用性についてのお尋ねがありました。
 議員のお話にありましたように、平成12年4月に地方分権一括法が施行され、国と地方のあり方が「対等と協力」の関係に立つ新しい時代を迎えた中で、地方自治確立への道筋を確かなものにするためにも、地方自治体自ら、自己決定、自己責任に基づいた自治体運営に取り組むことが求められていると考えています。
 そのためには、地方自治の運営の透明性を高め、地域住民に対する説明責任を果たしつつ、県民意思を踏まえた県民本意の行政運営を進めていくことが、何より大切なことであると思っております。
 本県では、これまで、行政の透明性を高めるための情報公開制度の先駆的な創設、総合計画をはじめとする県の各種計画を策定する際のパブリックコメントの実施、更には外部監査や政策評価の実施と県民への公表など、県民に開かれた県政の運営に努めてまいりました。
 私といたしましては、県民の視点に立った県政を一層推進するため、これまでの取組に加えて、例えば、首長の責務や県民投票制度などについて、総合的な視点に立って、県政運営の理念と基本原則を定め、それらを県民の権利として位置付ける意味でも、包括的な形で自治基本条例を制定することは有意義であると考えております。
 こうした自治基本条例の制定によって、行政全般がそれに基づいて運営され、これからの地域主権の時代にふさわしい、透明性の高い、県民本位の県政の実現につながって者と考えております。

 次に、条例制定に向けた県民参加に係るお尋ねがございました。
 ご指摘にもありましたように、自治基本条例の制定にあたっては、特に条例の性格が、いわば「自治体の憲法」とも言われるように、県政運営の包括的な基本方針を定める条例ですので、その策定手続きの過程が大変重要であり、議会はもとより、県民の皆さまや市町村の方々など、各界各層の広範な議論を踏まえて取り組むべきものであると考えております。
 そうした意味でも、その前提として、まず、できるかぎり多くの県民の皆さまに、この条例の意義や必要性などについて、関心や理解をお持ちいただくことが大切であると考えています。
 おりしも、現在、国と地方の間で、三位一体改革など、財政面でも地方が自立できるよう、活発な議論が交わされておりますが、こうした動向も、今後の新たな地方自治のあり方について、皆様の関心を高めていただく良い機会になっているのではないかと思っています。
 全国的な自治基本条例の制定事例は議員からお話がありましたが、本県でも、今年9月に愛川町で自治基本条例が施行されたほか、川崎市や大和市などいくつかの市や町で条例制定の議論が進められていると承知しており、市町村レベルでは、この自治基本条例についての関心が高まりつつあると受け止めております。
 こうした中で、県民の皆様の間にも、徐々に自治基本条例への関心が高まってくるのではないかと考えております。
 本県では、今年3月に策定した「地域主権実現のための中期方針」において、条例の性格、盛り込むべき要素など、「自治基本条例」を制定する際の課題等について調査・研究を進めることとしておりますが、その作業の中で、県民意識の醸成や県民参加を含めた策定手続きのあり方につきましても、検討してまいりたいと考えております。
 また、議員からは、検討の歩みが少々遅いのではないかというご指摘も頂きました。
 今年5月に、自治基本条例について、2年間に渡る研究の成果を、自治総合研究センターが報告書として発表したところでございます。
 自治基本条例は、県政全般にわたり、県政運営の基本となる条例ですので、その基礎的な研究は大変重要であると考えております。一方、この条例は、都道府県レベルでは北海道の行政基本条例の例があるのみで、その定義などについて明確な基準があるわけではございません。そういった意味からも条例制定に当たっての様々な課題をきちっと整理しておくことが肝要であると考えております。
 幸い、自治総合研究センターの研究報告書には、モデル条例の提示や各条文ごとの課題の摘出など、相当幅広く、また、細部にわたった研究成果が盛り込まれております。
 行政当局として、これを一つの素材としてしっかりと受け止め、今年度は更に勉強を重ねることとし、来年度以降、各界各層の県民の方々の参加もいただいた形での検討の場を設け、その意見も伺いながら、自治基本条例制定に向けて機運を高めてまいりたいと考えております。


  
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